長時間労働の是正
少子化の加速により日本の働き手は近年ますます減少しています。
働き手を維持するには、従来のように男性の長時間労働だけに頼るのではなく、病気や育児・介護などで長時間働けない人や、高齢者などさまざまな人たちが無理なく働けるような社会にしていく必要があります。
そのためには”長時間働く”という従来の労働慣行を大幅に見直す必要があります。
2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」も長時間労働の是正を主なねらいの1つとしており、誰もが働きやすい社会の実現を目指しています。
企業においても長時間労働を減らすことには様々なメリットがあります。
1. 従業員の心身の健康を守る
長時間働き続けると、当然ながら、脳や心臓、精神の疾患リスクが高まります。
従業員が心身の疾患でお休みしたり退職したりすると、その仕事を分担する他の従業員の健康リスクも高まり、さらなる離職が発生する可能性も高まります。
長時間労働の是正は、こうした健康リスクを抑え、組織の生産性の維持にも繋がります。
2. イノベーションの創出
長時間労働による疲弊した脳からは新しいアイデアは生まれません。
また、長時間労働はその仕事だけに時間が奪われてしまいますので、新しいことを学んだり、新しい人と出会って新たな気づきを得るといった「学び」の機会が乏しくなります。
企業が長時間労働の是正に取り組むことは、新しいアイデアを生み出す余力や、そのための「学び」の機会を増やすことに繋がります。
3. 採用力の維持
新入社員を対象にした「働くことの意識」調査(日本生産性本部, 2019)では、「人並み以上に働きたいか」という質問に対して「人並みで十分」という回答は63.5%で過去最高となり、「人並み以上に働きたい」(29.0%)の倍以上でした。そしてその差も6年間広がる傾向にあります。
「若いうちは進んで苦労すべきか」という質問では、「好んで苦労することはない」(37.3%)が7年連続増加傾向にあり過去最高になりました。一方、「苦労すべきだ」(43.2%)はまだ割合として高いものの7年連続減少しており、「好んで苦労することはない」との差はわずか5.9%になっています。
また、別の調査(オロ, 2023)では、Z世代(18〜29歳)が「古い」と感じる仕事の価値観の上位は以下の通りでした。
・1位・・・「上司より先に帰ってはいけないという暗黙のルール」(82.8%)
・2位・・・「新人は誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る」(79.9%)
・3位・・・「残業時間は長い人ほど頑張っている」(71.7%)
残業することが暗黙のルールや美徳である昔ながらの組織は魅力がないと感じられているようです。
採用力を維持するという観点からも、慣行的な長時間労働にメスを入れることは十分な意味があります。
4. コンプライアンスの遵守
慢性的な長時間労働の状況を改善しようとせず、労働時間を適正に管理しようとしないでいると、何か事故が起きた場合に、会社は使用者として安全配慮義務違反に問われるおそれもあります。
長時間労働を是正することは、そのようなリスクを下げ、従業員が健康に長く働ける環境を作ります。これが企業の成長の土台となります。
長時間労働の是正は「コストカット」ではなく、企業の持続可能性を高めるための積極的な「投資」と考えて取り組むことが重要です。
引用・参考文献:
・日本生産性本部 (2019). 平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査結果. https://www.jpc-net.jp/research/detail/002741.html
・株式会社オロ (2023). Z世代の「残業時間」に関する実態調査2023. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000170.000075257.html

